新しいレバナス「アドレバX」がひっそり登場 暴落時にレバレッジを下げれば長期投資できるのか?

レバナス

数年前にはあれほど話題になっていた「レバナス」ですが、最近はすっかり影が薄くなったように感じます。

今、投資信託の話題といえばオルカンやS&P500。

そんな中、2026年8月7日に新しいレバナスが登場していました。

その名も、

「たわらノーロード フォーカス アドバンスト・レバレッジX(NASDAQ100)」

愛称は**「アドレバX」**です。

恥ずかしながら、私は発売から1か月近く経つまで、この商品の存在に気が付きませんでした。

2026年9月4日時点の純資産総額も3.85億円。まだ設定されたばかりとはいえ、かつてのレバナスブームを知っている者からすると、ずいぶん静かなスタートに見えます。設定日は2026年8月7日です。(AM ONE)

しかし、商品そのものはなかなか興味深いものです。

私はレバナスを積み立てている。でも人には勧めない

最初に私自身の立場を書いておきます。

私はレバナスの長期積立を続けています。

では、

「レバナスはおすすめですか?」

と聞かれたらどう答えるか。

おすすめしません。

自分では買っているのに、人には勧めない。

矛盾しているようですが、理由は簡単です。

レバナスの値動きは普通ではないからです。

たとえば「iFreeレバレッジ NASDAQ100」は、2022年1月から12月までの1年間で62.15%下落しました。(岡三オンライン証券)

100万円が数十万円になる世界です。

私はレバナスに投資する以上、この程度の下落は起こり得るものとして考えています。今後も大きな下落局面は来るものとして投資しています。

しかし、普通に資産形成をしたい人が、自分のお金が60%も減って平然としていられるでしょうか。

私は無理だと思います。

だからレバナスは、

「60%下がるかもしれない。それでも積み立てる」

と分かったうえで参加する、いわば**「変態向け」**の商品だと思っています。

その変態向けの商品に、新顔が登場しました。

アドレバXは「固定レバレッジ」ではない

一般的なレバナスは、NASDAQ100の日々の値動きのおおむね2倍を目指します。

NASDAQ100が上がれば大きく上がりますが、下がれば大きく下がります。

そこでアドレバXが採用したのが、

「先物×ターゲットボラティリティ」

という考え方です。

NASDAQ100先物の価格変動リスクが年率35%程度になることを目標に、先物の買建額を増減させます。

しかも上限は純資産総額の200%ではありません。

最大300%です。

つまり市場が穏やかなときには、普通の2倍レバナス以上にアクセルを踏むこともあります。

一方、市場のボラティリティが高まれば、NASDAQ100先物の組入比率を下げます。(AM ONE)

簡単に言えば、

穏やかな相場ではアクセルを踏み、荒れた相場ではアクセルを緩めるレバナス

です。

これは長期投資をする人間からすると、とても魅力的に見えます。

レバナスの一番怖いところはドローダウン

長期投資でレバナスの何が怖いのか。

私はやはりドローダウンだと思っています。

大きく下落すると、そこから元の水準へ戻るのが大変になります。

だったら、

相場が危なくなったらレバレッジを下げればいいじゃないか。

誰でも一度は考えそうです。

実際、アドレバXの商品資料でも、過去データを利用したシミュレーションでは固定2倍型より最大ドローダウンを抑えられたとしています。

2006年4月から2026年4月までのシミュレーションでは、

戦略最大ドローダウン
NASDAQ100-53.5%
固定2倍型-83.0%
アドレバX戦略・米ドルベース-60.3%
アドレバX戦略・円換算-66.5%

となっています。これは実際の運用実績ではなく、信託報酬なども考慮していないシミュレーションです。(AM ONE)

固定2倍型のマイナス83%に比べれば、マイナス60%はずいぶんマシです。

……と書いていて、何かおかしいことに気付きませんか。

それでも60%以上下がるのです。

「暴落に強いレバナス」という言葉から想像するような、安全な商品ではありません。

あくまで、

「とんでもなく下がる可能性のある固定レバナスよりは、下落を抑えられるかもしれない」

という商品です。

やっぱり変態向けなのです。

そんなに都合よくレバレッジを変えられるのか?

そして私は、この仕組みにはもう一つ大きな問題があると思っています。

相場は、

「明日から暴落しますよ」

とは教えてくれません。

アドレバXも未来を予知しているわけではありません。

NASDAQ100先物の価格変動リスクを分析し、それに応じて組入比率を調整します。(AM ONE)

たとえば株価が何日も下がります。

ボラティリティが高くなります。

そこでレバレッジを落とします。

ここまではいい。

ところが、その翌日から株価が猛烈に反発したらどうでしょう。

せっかくNASDAQ100が上昇しているのに、こちらは低いレバレッジです。

いわゆる**「稲妻が輝く瞬間」**を、アクセルを緩めた状態で迎えることになります。

そして相場が落ち着いてきたので、再びレバレッジを上げます。

すると、また相場が下がる。

レバレッジを下げる。

また反発する。

こうなったら最悪です。

下落するとアクセルを緩め、反発を取り逃し、アクセルを踏み直したところでまた下がる。

相場はそんなに都合よく、

「ここから下落相場です」

「はい、ここが底です」

とは教えてくれません。

この弱点は運用会社自身も認めている

これは私が勝手に考えている弱点ではありません。

アセットマネジメントOneの商品資料にも、はっきり書かれています。

アドレバX戦略では、株式市場の急落時に組入比率を引き下げるため、

急落後に急反発する局面では固定2倍型に劣後する場合がある

と説明しています。

具体例として、2020年のコロナショック後や2025年の急反発局面も挙げています。(AM ONE)

まさにこの商品最大のジレンマです。

暴落時の損失を抑えようと思えば、暴落直後の急反発を取り逃す可能性があります。

下落を避けようとすれば、上昇まで避けてしまうことがある。

投資の世界に魔法はありません。

実は似た発想の商品が過去にもあった

ここで思い出したい商品があります。

「SOMPOスイッチ NASDAQ100 レバレッジ2.5倍」

です。

2022年5月9日に設定された商品でした。

仕組みはアドレバXとは違いますが、発想には共通するところがあります。

平常時にはNASDAQ100指数に約2.5倍のレバレッジをかけます。

ところが市場の下落リスクが高まったと判断すると、NASDAQ100のポジションを解消します。

モルガン・スタンレーが開発した「チェスシグナル」を利用し、信用スプレッドや株式オプションなどからリスク回避局面を判断する仕組みでした。(SBI証券)

考え方だけ聞けば素晴らしい。

上昇相場は2.5倍で取る。
暴落が来そうなら逃げる。
相場が良くなったらまた2.5倍で参加する。

こんなことができれば最高です。

ところが、現実の相場はそう簡単ではありませんでした。

NASDAQ100が上がっているのにファンドは下がった

SOMPOの償還運用報告書を見ると、興味深い数字が並んでいます。

期間SOMPOスイッチNASDAQ100参考指数
2022/5/9~2023/4/20-21.3%+3.1%
2023/4/21~2024/4/22+41.1%+30.2%
2024/4/23~2025/4/21-22.6%+7.2%

特に2024年4月から2025年4月です。

NASDAQ100の参考指数が7.2%上昇しているのに、

SOMPOスイッチは22.6%下落しました。

これこそスイッチ型商品の難しさでしょう。

相場から逃げれば下落を避けられるかもしれません。

しかし、その間に上昇すれば、その上昇も取れません。

そして戻るタイミングを間違えれば、今度は下落だけ受けることになります。

設定来ではNASDAQ100に大差をつけられた

もっと長い期間で見ると差はさらに大きくなります。

2022年5月9日の設定から2025年12月の償還まで、SOMPOスイッチの騰落率は**+18.2%**でした。

一方、公式の償還運用報告書では、NASDAQ100参考指数の設定来騰落率は**+102.1%**。

SOMPOスイッチは参考指数を83.9ポイント下回ったと報告されています。

もちろん、単純なNASDAQ100ファンドではありませんし、参考指数は米ドルベースです。

それでも、

「平常時は2.5倍」という商品が、NASDAQ100自体の上昇を大きく取り逃した

という結果は重いものがあります。

そしてSOMPOスイッチは繰上償還された

SOMPOスイッチは当初2032年5月まで運用する予定でした。

しかし、2025年12月26日に繰上償還されました。(Sompo Asset Management)

ここは誤解のないように書いておきます。

運用成績が悪かったから強制的に終了した、と発表されたわけではありません。

SOMPOが正式に説明した理由は、

受益権総口数が設定以来10億口を超えることがなく、今後も純資産総額の増加が見込みにくく、将来的に効率的な運用が難しくなると判断したためです。(Sompo Asset Management)

実際、純資産総額は第1期末の4.26億円から、第3期末には1.67億円、最終的には1.22億円まで減っています。

華々しく登場したレバレッジ商品が、わずか3年半ほどで市場から消えていきました。

私はこれを見て、

相場に合わせてリスクを切り替えるというのは、理屈ほど簡単ではない

と改めて感じます。

だからアドレバXもダメなのか?

では、

「SOMPOスイッチがうまくいかなかったのだから、アドレバXもダメだ」

ということでしょうか。

私はそこまでは思いません。

そもそも仕組みが違います。

SOMPOスイッチは、

2.5倍で投資するか、NASDAQ100のポジションを解消するか

という、かなり大胆なスイッチ型でした。

アドレバXは、ボラティリティに合わせてNASDAQ100先物の量を連続的に調整します。

こちらの方がずっと柔軟です。

そして、この仕組みが有効になりそうな相場もあります。

1年以上だらだら下がる相場なら効果がありそう

たとえば2022年のように、

一度暴落してすぐ元に戻るのではなく、金融引き締めなどを背景に長期間ずるずると下がっていく相場です。

早い段階でボラティリティが上昇し、その後も不安定な状態が続くのであれば、低いレバレッジを維持することで損失を抑えられる可能性があります。

実際、アセットマネジメントOneのシミュレーションでも、2008年のリーマンショックや2022年の米国大幅利上げ局面では、固定2倍型よりドローダウンを抑えられたとしています。(AM ONE)

逆に苦手なのが、

急落して、すぐ急反発する相場。

つまりV字回復です。

暴落対策には必ずトレードオフがあります。

アドレバXはそのトレードオフをどう処理できるのか。

これは実際に何度か暴落を経験してみないと分からないと思います。

設定から1か月の成績を見ても意味はありません。

むしろ5年、10年経って、

暴落時にどう動いたか

を見て初めて評価できる商品でしょう。

その前にファンド自体が十分な規模まで育つのか、という問題もあります。

SOMPOスイッチの例を見ると、それも無視できません。

私はアドレバXも含めてレバナスを推奨しない

ここまで書いてきましたが、私はアドレバXをおすすめしたいわけではありません。

従来型のレバナスもおすすめしません。

私は自分では積み立てています。

でもそれは、

大きなドローダウンが来ることを覚悟したうえでやっているから

です。

「NASDAQ100は成長するだろう」

だけでは足りません。

途中で資産が半分以下になっても積み立てを続けられるのか。

そこで怖くなって全部売ってしまわないか。

ここまで考えてから買う商品だと思っています。

だから私はやはり、レバナスは「変態向け」だと思います。

でも、オルカンやS&P500なら安心なのか?

そして最後に書いておきたいことがあります。

最近は、

「とりあえずオルカンを積み立てておけばいい」

「S&P500を毎月買っておけばいい」

という空気があります。

長期の資産形成として、レバナスよりはるかに普通の選択だと私も思います。

しかし、

オルカンもS&P500も貯金ではありません。

オルカンが連動対象としている代表的な全世界株指数であるMSCI ACWIは、2007年10月から2009年3月までに最大58.38%のドローダウンを経験しています。(MSCI)

S&P500も世界金融危機では、2007年10月から2009年3月までに約57%下落しました。(Fidelity)

もちろん、現在日本で販売されている投資信託そのものの実績ではありませんし、円建て投資では為替の影響もあります。

それでも、

「全世界株だから大きく下がらない」
「S&P500なら安全」

というわけではありません。

株式に投資する以上、大きな下落はあります。

大切なのは「下がらない商品」を探すことではない

私は今後もレバナスを積み立てます。

アドレバXについても興味深く見ていきたいと思っています。

でも、それを他人におすすめするつもりはありません。

そしてオルカンやS&P500を積み立てている人にも、

「安心だから何も考えなくていい」

とは思ってほしくありません。

好調な相場が何年も続くと、投資信託の積立が貯金のように感じられてきます。

毎月お金を入れれば、いつの間にか増えている。

しかし、ある日その残高が大きく減ることがあります。

それが株式投資です。

アドレバXは、レバナス最大の弱点である大きなドローダウンを何とかしようとした、面白い商品です。

その試みが成功するのか。

それとも、かつてのSOMPOスイッチのように市場から静かに消えていくのか。

今の段階では誰にも分かりません。

ただ一つ言えるのは、

暴落をうまく避けながら、上昇だけいただくほど相場は簡単ではない

ということです。

そしてそれはレバナスだけの話ではありません。

オルカンでもS&P500でも同じです。

投資を続けるのであれば、

「いくら儲かるか」だけではなく、「どこまで下がる可能性があるのか」も知ったうえで続ける。

私はその方が、長期投資ではずっと大切だと思っています。

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