最初に好きだった香りが1年後に苦手になった体験談
アロマテラピーを始めてから1年が経った頃、私は不思議な現象に直面しました。最初に購入して愛用していたベルガモットの香りが、なぜか急に苦手になってしまったのです。
ベルガモットから始まった私のアロマ体験
2019年3月、体調不良をきっかけにアロマテラピーを始めた私が最初に選んだのは、ベルガモットのエッセンシャルオイルでした。柑橘系の爽やかな香りに少しフローラルな甘さが加わったこの香りに、当時の私は完全に魅了されていました。
毎朝の通勤前、ハンカチに1滴垂らして持ち歩く習慣を続けていました。電車の中でふとハンカチの香りを嗅ぐと、心が軽やかになり、一日の始まりに前向きな気持ちになれたのです。仕事のストレスを感じた時も、この香りが私の心を落ち着かせてくれる頼もしい存在でした。
購入記録を見返すと、最初の半年間でベルガモットオイルを3本も消費していました。それほど頻繁に使用し、その香りに依存していたのです。
1年後に訪れた突然の変化
ところが、アロマテラピーを始めてちょうど1年が経った2020年3月のある朝、いつものようにベルガモットの香りを嗅いだ時、違和感を覚えました。「あれ?なんだか重たく感じる」という程度の軽い違和感でした。
最初は「今日は体調が悪いのかな」程度に考えていましたが、その後1週間ほど経っても同じ感覚が続きました。むしろ日を追うごとに、ベルガモットの香りが鼻につくように感じるようになり、最終的には「この香り、もう嫌だ」とまで思うようになってしまったのです。
| 期間 | ベルガモットへの反応 | 使用頻度 |
|---|---|---|
| 開始~6ヶ月 | 非常に好き・癒される | 毎日使用 |
| 6~12ヶ月 | 好き・習慣的に使用 | 週4-5回使用 |
| 12ヶ月以降 | 違和感→苦手に変化 | 使用停止 |
同じ現象を経験した仲間たちとの出会い
この不思議な体験について、アロマテラピーのワークショップで知り合った仲間たちに相談してみると、驚くべきことが判明しました。10人中7人が、同様の経験をしていたのです。
「最初はラベンダーが大好きだったのに、今は全然ピンとこない」
「ユーカリの香りに夢中だった時期があったけど、今嗅ぐと頭痛がする」
「ローズマリーから始めて、今はもう使っていない」
このような証言を聞いて、私は自分だけの特殊な体験ではないことを知りました。どうやら香りの好みが変化するのは、アロマテラピーを続ける人にとって珍しいことではないようです。
この発見が、私の香りと嗅覚に対する探求心に火をつけることになりました。なぜ人は香りの好みが変わるのか、そして本当に自分に合う香りとは何なのか。この疑問を解決するための調査が、次の章から始まる私の新たな学びの旅となったのです。
嗅覚の変化メカニズム:なぜ香りの好みが変わるのか
実は、香りの好みが変わるのは全く不思議なことではありません。僕自身、使い始めて1年後に最初に愛用していたベルガモットの香りが突然重く感じるようになった時は驚きましたが、これには明確な科学的根拠があることを後から知りました。
嗅覚の順応(嗅覚疲労)が起こる仕組み
まず最も基本的なメカニズムが「嗅覚の順応」です。これは同じ香りを長期間嗅ぎ続けることで、鼻の嗅覚受容体がその匂い分子に慣れてしまう現象です。
僕の場合、毎朝の通勤前にベルガモットを2滴手首に付ける習慣を3ヶ月続けていました。最初は爽やかで気分が上がっていたのに、ある日突然「あれ?今日のベルガモット、なんか違う?」と感じたのがこの現象でした。実際には香りは変わっていないのに、脳が「いつもの香り」として処理してしまい、感動や効果を感じにくくなっていたのです。
体調とホルモンバランスの影響
さらに興味深いのが、体調やホルモンバランスの変化が香りの感じ方に大きく影響することです。特に僕たち働き盛りの男性は、ストレスレベルや疲労度によって嗅覚の感度が変化します。
実際に僕が記録を取ってみたところ、以下のような傾向がありました:
| 体調・状況 | 好む香りの傾向 | 実際の体験例 |
|---|---|---|
| 高ストレス時 | 重厚で深みのある香り | サンダルウッド、フランキンセンス |
| 疲労困憊時 | 刺激的で覚醒効果のある香り | ペパーミント、ユーカリ |
| リラックス時 | 軽やかで爽やかな香り | ラベンダー、ベルガモット |
記憶と感情の関連による変化
もう一つ重要な要素が、記憶と感情の関連性です。脳の嗅覚を処理する部位は、記憶や感情を司る海馬や扁桃体と密接に繋がっています。
僕の体験で印象的だったのは、転職活動中に愛用していたローズマリーの香りです。当時は集中力アップのために使っていましたが、転職が決まった後にその香りを嗅ぐと、なぜか当時の不安感が蘇ってきて避けるようになりました。香り自体に問題があるわけではなく、脳がその香りと特定の感情体験を結び付けて記憶していたのです。
季節と環境要因の影響
最後に見落としがちなのが、季節や環境の変化です。湿度や気温、さらには生活環境の変化も嗅覚に影響を与えます。
例えば、冬場の乾燥した室内では香りが強く感じられ、夏場の湿度の高い環境では同じ香りでも弱く感じられます。僕は引っ越しを機に、以前は心地よく感じていたイランイランが急に甘すぎると感じるようになりました。新しい住環境では室内の空気の流れが変わり、香りの拡散の仕方が変化したことが原因でした。
これらのメカニズムを理解すると、香りの好みが変わることは自然な現象であり、むしろ自分の心身の状態を知るバロメーターとして活用できることが分かります。次に、この変化を踏まえた上で、本当に自分に合う精油を見つけるための具体的な基準について詳しく解説していきます。
香りの好みが変わる3つの主要因
実際に私がアロマオイルを使い続けて気づいたのは、香りの好みが変わるのには明確な理由があるということです。最初はなんとなく「飽きたのかな?」程度に考えていましたが、詳しく調べてみると、主に3つの要因が関わっていることが分かりました。
1. 心身の状態変化による嗅覚の適応
最も大きな要因は、私たちの心身の状態が日々変化していることです。
ストレスレベルの変動が香りの好みに与える影響は想像以上に大きく、私の場合、プロジェクトの繁忙期とそうでない時期で、求める香りが180度変わることがあります。
忙しい時期には:
– ペパーミントやローズマリーなどのシャープな香りを好む
– 集中力を高める覚醒系の香りに自然と手が伸びる
– 甘い香りや重厚な香りが「重く」感じられる
リラックスできる時期には:
– ラベンダーやカモミールなどの穏やかな香りを求める
– 深いリラクゼーション効果のある香りが心地よく感じる
– 以前は「物足りない」と思っていた優しい香りが好ましくなる
これは、私たちの脳が現在の状態に最も適した香りを本能的に求めているからです。実際に、同じラベンダーオイルでも、疲れている日と元気な日では全く違う印象を受けることを何度も経験しました。
2. 嗅覚の慣れと感受性の変化
毎日同じ香りを使い続けていると、嗅覚の慣れ(嗅覚順応)が起こります。これは医学的にも証明されている現象で、同じ刺激に対して感受性が低下することを指します。
私の実体験では:
| 使用期間 | 香りの感じ方 | 対処法 |
|---|---|---|
| 1週間目 | 新鮮で印象的 | そのまま継続 |
| 2-3週間目 | やや物足りなさを感じる | 滴数を1-2滴増やす |
| 1ヶ月目 | ほとんど香りを感じない | 別の香りにローテーション |
特にユーカリのような強い香りは、2週間程度で慣れが生じやすいことが分かりました。一方で、フランキンセンスのような複雑な香りは比較的慣れにくく、長期間使用できる傾向があります。
この慣れを防ぐために、私は現在3-4種類の香りをローテーションで使用しています。月曜日はペパーミント、水曜日はラベンダー、金曜日はオレンジスイートといった具合です。
3. 季節・環境要因による嗅覚の変化
意外に見落とされがちなのが、季節や環境の変化が香りの好みに与える影響です。
湿度の変化は香りの拡散に大きく影響し、同じオイルでも季節によって感じ方が変わります:
– 夏場(湿度70%以上):香りが強く感じられるため、軽やかな柑橘系を好むように
– 冬場(湿度40%以下):香りが弱く感じられるため、濃厚な樹脂系やスパイス系を求めるように
実際に私の場合、7月に大好きだったイランイランが、12月には「重すぎる」と感じて使わなくなり、代わりにシダーウッドやサンダルウッドといった温かみのある香りを多用するようになりました。
また、室温も重要な要因です。エアコンの効いた涼しい部屋では香りの拡散が遅くなるため、普段より多めに使用する必要があることも経験から学びました。
これらの要因を理解することで、「なぜ好みが変わったのか」が明確になり、より効果的なアロマオイル選びができるようになります。次のセクションでは、この知識を活かした具体的な選択方法をご紹介します。
体調・ストレス状態による嗅覚への影響
僕がIT業界で働いていた頃の話ですが、プロジェクトの進捗によって同じラベンダーの香りに対する反応が180度変わることがありました。平常時には心地よく感じていた香りが、納期前の極度のストレス状態では「強すぎる」「頭痛がする」と感じるようになったのです。
この体験がきっかけで、体調やストレス状態が嗅覚に与える影響について詳しく調べることになりました。
ストレスホルモンと嗅覚の密接な関係
ストレス状態にあるとき、私たちの体内ではコルチゾールというホルモンが大量に分泌されます。このコルチゾールが嗅覚受容体の感度を変化させることが、近年の研究で明らかになっています。
実際に僕が体験した変化を記録してみると、以下のような傾向がありました:
| ストレス状態 | 好む香りの傾向 | 避けたくなる香り |
|---|---|---|
| 低ストレス期 | フローラル系、甘い香り | 特になし |
| 中程度ストレス期 | 柑橘系、ハーブ系 | 濃厚な花の香り |
| 高ストレス期 | ミント系、ユーカリ系 | 甘い香り全般 |
この記録を取り始めてから気づいたのは、体が本能的に必要な香りを求めているということでした。高ストレス期にミント系を好むのは、メンタルクリア効果を求める体の自然な反応だったのです。
疲労度と香りの感じ方の変化
さらに興味深いのは、肉体的な疲労と精神的な疲労で、好む香りが異なることです。
肉体的に疲れているときは、ローズマリーやペパーミントといった刺激的な香りを求める傾向があります。これらの香りには覚醒作用があり、疲れた体を活性化させる効果があるためです。
一方、精神的に疲れているときは、ラベンダーやカモミールなどの鎮静系の香りを好むようになります。頭の中がいっぱいになっているときに、心を落ち着かせる香りを本能的に求めるのです。
僕の場合、システムの障害対応で徹夜明けの時は必ずローズマリーを、プレゼンテーション前の緊張状態ではベルガモットを選ぶようになりました。これは意識的に選んでいるのではなく、その時の体調が自然と求める香りなのです。
体調管理のバロメーターとしての嗅覚活用法
この発見により、僕は香りの好みを体調管理のバロメーターとして活用するようになりました。
毎朝、3つの異なる系統のオイル(柑橘系、フローラル系、ハーブ系)の香りを嗅いで、最も心地よく感じるものを選びます。これにより、その日の自分のコンディションを客観的に把握できるようになりました。
例えば、普段好きなベルガモットが「きつい」と感じる日は、睡眠不足や体調不良のサインです。逆に、いつもは苦手なユーカリを心地よく感じる日は、集中力が高まっている証拠として捉えています。
この方法を続けて2年になりますが、体調の変化を早期に察知できるようになり、風邪をひく前に休息を取ったり、ストレス過多の時期に適切な対処ができるようになりました。忙しい現役世代にとって、香りを使った体調管理は非常に実用的な手法だと実感しています。
記憶と感情が香りの好みに与える変化
香りの好みが変わる最大の要因は、実は記憶と感情の結びつきにあります。僕がシステムエンジニア時代に愛用していたペパーミントオイルが、転職後に苦手になった理由も、この仕組みで説明がつきました。
記憶と香りが作る感情のループ
脳科学の研究によると、嗅覚は他の五感と異なり、大脳皮質を経由せずに直接「大脳辺縁系」に到達します。この大脳辺縁系は記憶や感情を司る部分で、だからこそ香りは瞬時に過去の記憶や感情を呼び起こすのです。
僕の場合、ペパーミントの香りを嗅ぐたびに、深夜残業でコードを書いていた当時の疲労感や焦燥感が蘇るようになりました。最初は「集中力アップ」の効果を期待して使っていたのに、いつの間にか「仕事のストレス」と結びついてしまったのです。
感情の変化が香りの受容体に与える影響
さらに興味深いのは、感情状態によって実際に香りの感じ方が変わるという点です。ストレスホルモンのコルチゾールが高い状態では、嗅覚受容体の感度が変化し、同じ香りでも不快に感じやすくなることが分かっています。
| 感情状態 | 香りの感じ方 | 具体例 |
|---|---|---|
| リラックス時 | 香りを心地よく感じやすい | 休日の朝にラベンダーを嗅ぐ |
| ストレス時 | 同じ香りでも刺激的に感じる | 締切前にラベンダーを嗅ぐ |
| 疲労時 | 香りの識別能力が低下 | 残業後に精油を使っても効果を感じにくい |
記憶の書き換えで香りの好みを変える方法
この仕組みを理解すれば、苦手になった香りを再び好きになることも可能です。僕が実際に試した方法をご紹介します。
段階的な記憶の上書き作戦
1. 環境を変える:以前とは全く異なる場所で香りを試す
2. 時間を変える:ストレスの少ない休日の朝などに使用
3. 組み合わせを変える:他の好きな香りとブレンドして使う
僕はペパーミントを、自然豊かな公園でのウォーキング時に使うようになりました。3ヶ月ほど続けると、「仕事のストレス」ではなく「爽やかな朝の散歩」という新しい記憶が形成され、再び心地よく感じられるようになったのです。
この経験から学んだのは、香りの好みは固定的なものではなく、私たちの生活や感情の変化とともに流動的に変わるということです。だからこそ、定期的に香りの好みを見直し、その時の自分に最適な精油を選び直すことが重要なのです。

